膣炎

膣炎・その原因と治療


1.はじめに

膣炎は膣の炎症です。膣の組織は赤くなり、はれて、ひりひりするような感覚などがあります。
おりものが増え、悪臭があり、痒みや、やけるような感じが起こります。膣の細菌感染が最も多い原因ですが、それ以外の原因もあります。治療をするためには、その原因を発見しなければなりません。
それには時間のかかる時もあります。膣炎は普通は危険な病気ではありません。しかし、なかなかうまく治らなかったり、非常に不快感を伴うこともあります。
膣炎の症状は、女性にとっては珍しいことではありません。膣炎は成人女性によく見られますが、しかし幼児や老人にも見られることがあります。ある種の膣炎は性的交渉によってうつります。女性に膣炎があるときには、相手の男性にも影響することがあります。男性は全く症状がなくても、病原菌を保持していてそれを女性にうつすことができるのです。しかし、すべての膣炎が感染によるものではありません。
性的接触が全くなくても膣炎が起こるのです。
膣炎は深刻な医学上の問題ではありませんが、放置しておいて治るものではありません。幸いなことに膣炎の治療に使用する薬剤は大変有効です。貴方の主治医が適切な治療をすれば、治ってしまい
長期的な影響をもつことはありません。感染以外の原因による膣炎も原因が発見できれば解決できます。ここでは膣炎の主な原因と徴候を説明します。膣感染症の三つのタイプについて、その他の原因による膣炎について、また膣炎を防止するためにはどうしたらよいかについて記述します

2.膣

膣は子宮へと通じる筋肉のある管です。その外側口は外陰部に囲まれています。

◎膣の酸性
他の体の部分と同じように、膣にはいくらかの細菌が住んでいます。この細菌が膣の分泌物を分解しそのため膣内は酸性に保たれています。膣内が酸性に保たれていると、その他の有害な細菌の増殖を防ぐ作用があります。しかし膣の酸性度は、下記のような事柄によって影響をうけるのです。

・他の病気のために使用される抗生物質
・頻回すぎる膣の洗浄
・タンポンの使用
・きついスラックス
・股部に木綿を使用してないパンティーやパンティストッキング
・肥満
・糖尿病
・妊娠
・最近の出産
・経口避妊薬

膣の酸性度が変化すると、今度は有害な細菌その他が膣内で繁殖するようになります。そうすると、膣内に炎症が起きて、赤くなったり、はれたり、ひりひりしたり、またおりものも増加します。
全ての膣炎が膣内の酸性度の変化によって起こるわけではありません。睡眠不足、ダイエット、ストレス疾病などによって感染に対する抵抗力が弱まると、膣内に感染が起き、また炎症が起こるのです。
ある種の感染は性交渉により起こります。

◎膣分泌物(おりもの)
膣からの分泌物はある程度までは正常です。正常な膣の分泌物は膣内部をきれいに保ち、健康な状態におきます。月経周期の中頃で透明な、あるいは白っぽい分泌物の増加に気付く女性もいます。
正常な分泌物に悪臭は無く、痒みや、やけるような感覚も伴いません。また普段している入浴以外には特別な治療も不要です。
膣炎のために起こる分泌物は正常ではありません。異常な分泌物(おりもの)に気が付くことは、治療の第一歩です。もし異常な分泌物に伴う症状-痒み、やけるような感覚、悪臭などがあるときは、医師を訪れましょう。

3.医師に話す事

膣炎の原因を発見するためには患者と主治医が協力する事が一番です。そのために時間のかかること
もあります。貴女の主治医は、貴女の症状がどんなものか正確に知る必要があります。正しい診断の
ために、膣分泌物を調べることが必要です。そのために、内診をうける1~2日前には自分で膣の洗浄をしてはいけません。医師は内診時に膣から分泌物を少量採取して、顕微鏡で調べたり、培養したりして、
何が炎症の調べます。原因がはっきりすれば、それに合った薬剤が使用できます。膣炎に他の原因が
あれば、それをもっと調べることもあります。

◎膣の感染症
膣炎は決して深刻な病気ではありませんが、その症状はなかなか厄介なことがあります。膣炎の徴候をよく知っていれば恐れることはありませんし、また感染の初期に医師を訪れることもできます。
次に膣感染症の三つの代表的なものをとりあげてみましょう。

1)膣カンジタ症
膣カンジタ症は最も多い膣の感染症で、外陰部の痒みが起こります。完全に治すのが困難な場合もあり、また再発することも多いのです。カンジタはかび、イースト、モニリアなどとも呼ばれています。

☆症状
カンジタの感染があると、おりものが増加しますが、悪臭はなく白色で「チーズ」状です。かなりひどい痒み、やけるような感じが主な症状で、外陰部が赤くなります(発赤)

☆原因
パンをつくる時に使用するイーストに似た菌糸類が原因です。どの女性にも起こりますが、特に糖尿
病、妊娠、肥満などの場合によく見られます。これらの場合、体の代謝と膣の酸性度に変化をきたしカンジタの増殖を促します。
抗生物質や経口避妊薬の使用も、カンジタ症になりやすくします。抗生物質はカンジタの増殖を促し膣を保護する働きの細菌を殺してしまいます。経口避妊薬は、妊娠によく似た膣の化学的な変化を
もたらします。いずれの場合にも、カンジタは大増殖して炎症が起きます。

☆治療
検査によってカンジタ症であることが確定すると、カンジタ症に効果のある薬が使用されます
それは膣内に入れる坐薬かクリームです。薬が少し外へ出てべてべてするので、治療中はナプキンが必要かもしれません。治療の詳しい事は、医師に相談して下さい。ほとんどの場合、カンジタ症は治療すれば治ります。時には、治療してもよくならない場合がありますが、それは特に妊婦や糖尿病の方によく起きます。カンジタが増殖しやすくなるような条件を改善することも必要です。

2)細菌性膣炎
もとガルドネレラ膣炎とか非特異的膣炎といわれていたものです。膣炎の症状はみられれるのですが原因がよくわからないことがあります。ガルドネレラという名の細菌は性交渉によってうつることが最も多いのですが、男性の方は通常症状が全くありません。

☆症状
赤くなったり(発赤)、痒みのあることはまれです。灰色または黄色の水っぽいおりものがあり、魚のような生臭い悪臭があります。ガルドネレラの感染は、タノ種類の感染と同時におこることがあり、その場合には他の症状が見られます。いずれにしても、感染の原因をはっきりと知るために医師に相談して下さい。

☆原因
ガルドネレラという名の細菌がその原因です。どのような場合に、この細菌が膣内で異常に増殖するのかは、よく分かっていません。

3)トリコモナス膣炎
トリコモナスの感染は膣だけでなく(尿道などの)尿路にも起こります。ガルドネレラ感染のように男女両性に起こります。

☆症状
痒みのある、黄緑色のおりものがあります。おりものは泡立っており、イヤな臭いがあります。またおりものによって痒みや、やけるような感じがありますが、特に排尿時に強く自覚するでしょう。
局所は赤くなり、またはれることもあります。これらの症状は月経の前後に特にひどくなることがあります。

☆原因
トリコモナス症は原虫という名の単細胞で、細菌よりは大型の病原体による感染がその原因です。
ガルドネレラと同じように、トリコモナス症も性的交渉によって感染します。

☆治療
トリコモナス症は尿路にも侵入するので、膣内に薬を入れるだけでは不充分だと考えられています。
メトロニダゾールという薬はほとんどの症例に有効です。治療は普通7日間、錠剤を内服します。
特別な場合には一日だけの治療を行う場合もあります。お互いに感染し合うのを防ぐために、男女とも同時に治療するのが良いやり方です。
メトロニダゾールは効果があり、副作用の少ない薬ですが、吐き気、嘔吐、尿の色が濃くなるなどの副作用が起こる事があります。その場合には、直ぐに医師に報告して下さい。この薬の副作用は
アルコールを飲むことは出来ません。この薬とアルコールを併用すると大変不快な症状が表れますメトロニダゾールの妊娠中の使用は避けるべきです。

◎貴女のパートナーやセックスパートナーの治療
トリコモナスは、貴女だけではなく、相手の男性にもあるとみてよいのです。従って感染の完全な治療は男女の両方を対象にしなければなりません。男性側に全く症状がない場合にも、男女双方
が治療を受けなければ、再発が続く可能性があるわけです。
理想的には、貴女のパートナーは医師の診療後治療を受けるべきです。重要なことは、たとえ症状が全くなくても治療を受ける必要があるという点です。そのため、貴女の医師は、貴女とあなたの
パートナーの双方にメトロニダゾールを処方するかもしれません。その場合、パートナーにメトロニダゾールを服用してはいけない医学的な理由がないことを確かめてから、服用するようにして下さい。
貴女も、あなたのパートナーも質問や心配があれば十分に医師と話し合って下さい。

◎治療について更に注意する事
治療は感染症の種類によって異なります。カンジタ症に有効な薬がトリコモナスにも有効ということはありません。一種類以上の治療が必要です。
膣炎の治療中は医師の指導をよく守り、指示どおり薬を使用してください。薬剤を全部使用しないうちに、おりものが消失するかもしれませんが、そんな場合でも感染がまだ残っていることがあります
また感染が再発したら、すぐに医師に相談して下さい。違う種類の感染が起きる場合もありますし、
もしそうなら別の治療が必要になります。
治療中は性交渉をひかえるようにと、医師が忠告する場合があります。また、コンドームを使用して再感染を防ぐようにといわれる場合もあります。一人一人の病気は違うのですから、医師は貴女に最善の指示をしてくれます。

4.その他の原因による膣炎

膣の炎症はすべて感染によるわけではありません。膣のあたりは、女性用衛生スプレーやバブルバス等の化学物質によってかぶれることもあります。タンポンを使い過ぎて膣壁を傷つける場合もあり、通気性のない、きつい衣服によってむれる場合もあります。
このような時、外陰部は赤くはれ、おりものが増加することがあります。経口避妊薬のようなホルモンの使用が原因となって膣炎の症状があらわれる場合もあります。
膣炎の症状はいろいろの原因により起こります。(スプレーの中の化学物質、膣洗浄のしすぎ・タンポンにより膣に傷つがくこと、経口避妊薬によるホルモンバランスの変化など)
閉経期に入ってから後は、卵巣からのホルモン(エストロゲン:卵胞ホルモン)がなくなり、膣粘膜はエストロゲンによる刺激を受けなくなります。そのため膣粘膜は薄くなり、分泌物も少なくなって乾いたようになります。
このような膣は性交などで傷つきやすく、抵抗力がありません。炎症が起きると、おりものも増加します。
このような膣炎は萎縮性膣炎と呼ばれます。

5.自分で出来る予防法

膣を健康な状態に保つために、自分で出来ることがあります。もし膣炎が再発する時には、次の点に気をつけましょう。

◎直腸(肛門)から膣の方へ細菌が広がるのを防止しましょう。排便後、前方から後方に向かって、膣口から離れるように拭きましょう。

◎外陰部を清潔に保ち、なるべく乾燥させておきましょう。

◎刺激の強い物質はさけましょう。どぎつい石鹸、防臭剤、女性用衛生スプレー、香料入りトイレットペーパー香料入りタンポンなど。

◎月経期間の始めから終わりまでタンポンだけを使用することは避けましょう。

◎ペッサリーや避妊用ゼリー注入器は、よく洗っておきましょう。

◎頻回すぎる洗浄は避けましょう。

◎きついジーンズ、パンティー、木綿股部のないパンティーストッキング、通気性のない下着などは避けましょう。

◎体一般の衛生状態を良好に保ちましょう。健康な体と(その)組織は感染に対する抵抗力を高めます。

◎素人療法に頼らないようにしましょう。素人療法や洗浄は一時的に有効にみえるかもしれませんが、それは問題をかくすだけで解決にはなりません。

6.おわりに

多くの女性はその生涯のどこかで膣炎を経験します。成人女性の1/3は膣炎にかかったことがあります。

タイトルとURLをコピーしました