日銀の国債購入加速

日銀の国債購入加速

日銀の国債購入加速、保有規模は「ルビコン川」超えに近づく

Simon White 2022年6月21日 23:09 JST

日本銀行が日本国債の10年物利回りを0.25%以下に抑えるため最近行った国債購入の規模とスピードは、これ以上ないほど際立っている。6月はまだ終わっていないが、日銀が今月に入って買い入れた国債は、すでにこれまでの月より25%余り多い。それでも10年債利回りを辛うじて上限以下に抑えられているに過ぎず、日銀の購入は全年限に及んでいるにもかかわらず他の年限の利回りは上昇している。

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  日銀はイールドカーブコントロール(YCC)を通じ、日本国債発行残高のほぼ50%を保有。2001年に「一時的」措置として量的緩和を開始した際には、想像もしなかった地点に達している。国債市場でこれほど多くを保有している主要な中央銀行は他になく、日銀が踏み入れようとしているのは未踏の領域だ。

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  日銀が保有する国債は今週にも発行残高の50%を超えるが、そうなれば日銀はルビコン川を渡る。どう考えてみても、日銀が日本国債市場そのものになるのだ。これが長期的に何を意味するのか判明するのは先だろうが、国内外で日本国債を保有する民間投資家にとって、こうした偏った市場の居心地がいいはずはない。

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  日本の民間セクターは国債を大きくオーバーウエートとする一方、株式はアンダーウエートだ。日本のインフレ率は最近、10年ぶりの高水準を記録し、円安は一段のインフレ高進を招くとみられている。日本国債の保有が日銀に集中しているリスクは、インフレが制御不能になる兆しが生じれば、国債からインフレに比較的強い株式へと資金が一斉にシフトする可能性が高いことを意味している。国債市場の半分を占めることで、日銀は転換点を迎えるだろう。世界3位の債券市場が売りを浴びれば、その損失を一手に引き受けるのは日銀ということになる。

原題:The BOJ Is About to Cross the Rubicon on JGBs

ルビコン川を渡る

「ルビコン川を渡る」という表現は、後戻りのきかない道へと歩み出す、その決断を下すことを意味する。

「一線を越える」とか「背水の陣を敷く」などともいう。
ルビコン自体は、大した障害ではない。
アペニン山脈に水源を発して東に流れ下るイタリアの小さな川で、リミニとチェゼーナの間を通ってアドリア海に注ぐ。
渡るのは簡単で、それは紀元前49年1月10日も同じだった。
そのとき、ユリウス・カエサルは配下の一個軍団を従えてこの川の北岸に立ち、次の一手を決めあぐねているように見えた。

カエサルが迫られていた決断は、どうやって対岸に渡るかということには関係なかった。
すぐそばに橋が架かっていたからだ。
彼を立ち止まらせ、思案に暮れさせていたのは、この川が象徴するものだった。
ルビコン川は、当時カエサルが統治を任されていたローマの属州ガリア・キサルピナ(アルプスのこちら側のガリアの意)と、ローマおよびその周辺の直轄領から成るイタリア本土とを隔てる境界線だったのである。
将軍が軍を率いてイタリア本土に入ることは、ローマの法律で明確に禁じられていた。

その禁を、今まさにカエサルは破ろうとしているのであり、彼自身、それがどういう結果を招くか重々承知していた。
ルビコン川を渡ることは、カエサル本人はもちろん、彼につき従う者も死罪に問われることを意味していた。
従って、もし軍団を率いて川を渡るならば、かつての盟友で今や不倶戴天(ふぐたいてん)の敵となったポンペイウスが指揮を執る軍勢を打ち破ってローマを掌握するしかなかった。
それができなければ、刑死は免れない。
自らの決断の重さにしばらく思いを巡らしてから、カエサルはルビコン川を渡る。
ローマ内戦の火蓋が切って落とされた。

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