TikTok Now

「映え」から「リアル」へシフトするSNS

文:鈴木 朋子2022.11.14

「TikTok Now」TikTokアプリ内の画面

「TikTok Now」TikTokアプリ内の画面

(出所:TikTok)

 短尺動画共有アプリ「TikTok」が、2022年9月にアプリ内機能と単独アプリという形式で「TikTok Now(ティックトックナウ)」を発表しました。

 TikTok Nowとは、まさに「今」を包み隠さずシェアするものです。毎日、ランダムな時間に通知が送られてくるのですが、通知を開いてから3分以内に撮影、投稿しなければなりません。通知が送られてくる時間は、早朝かもしれないし、夕飯後のリラックスしているときかもしれません。でも、撮影しなければ友人の投稿が見られないのです。

 そして、撮影はスマホのインカメラとアウトカメラで同時に行われます。撮影している自分と自分が見ている風景が1枚の画像に収められるのです。たった3分では化粧もできず、アプリ内カメラでは顔の補整もできません。着替えもしなければならないかもしれませんし、自分の部屋が散らかっている場合は大急ぎで片付けるか、別の場所に移動しなければなりません。つまり、「自分を良く見せる=盛る」ことはできず、自分の「リアル」を友人に共有されることになるのです。

 SNSといえば、「Instagram」に美顔加工した自撮りやおしゃれなスイーツなどを投稿する「インスタ映え」が流行し、日常よりも「映え」を投稿するものでした。しかし、日常にはそれほど映える瞬間はありません。そこで、24時間で投稿が消えるInstagramの「ストーリーズ」がはやりました。消えてしまうなら、大した投稿でなくてもいいと考える人が多いからです。今や、投稿よりもストーリーズの利用が多いユーザーも少なくありません。日常を人と共有したいユーザーが増えたのです。

欧米のZ世代で火が付く

 実は、TikTok Now以前にリリースされた類似のSNSが欧米のZ世代に人気となっています。「BeReal(ビーリアル)」です。

 BeRealは2022年5月にアプリのダウンロード数が1000万を超え、2021年第4四半期から4.9倍も増加している注目のアプリです(data.ai調べ)。TikTok Nowがまだリリースされていないため、詳細は比較できないのですが、ほぼ同じ機能とみられています。時間の猶予がTikTok Nowは3分で、BeRealが2分であるぐらいしか違いはないのかもしれません。

 また、前後カメラで撮影する機能も増えてきています。Instagramは2022年7月に「デュアル」機能を、「Snapchat」も2022年8月に「デュアルカメラ」をリリースしました。時間制限はともかくとしても、前後カメラで撮影した1枚を投稿したいニーズが高まっているのですね。

 ところで、前後カメラで撮影した場合、プライバシーの流出が気になります。TikTok Nowでは、16歳未満のアカウントは初期設定で非公開となり、18歳未満は友達以外から検索される機能が使えないとされています。また、公開範囲を友達に制限することもできます。もし自分の子どもが使いたいと言った場合には、安全面に配慮し、ごく近しい友人とだけ投稿を共有し、アカウントも非公開にしておくことを約束した方がよさそうです。

出典:日経パソコン、2022年11月14日号、同名コラムより

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