ワークマン仕掛け人

【ワークマン仕掛け人・新年特別講義】
ユニクロやしまむらの市場に絶対行かない理由

土屋哲雄:株式会社ワークマン専務取締役  経営・戦略 ワークマン式「しない経営」

2023.1.4 3:25

ワークマン式「しない経営」

今、最も注目を集める急成長企業ワークマン。4000億円の空白市場を開拓し、“頑張らない経営”で10期連続最高益。「#ワークマン女子」も大人気。テレビでも大きく特集され続けている。
さらに急成長の仕掛け人・ワークマンの土屋専務白熱の処女作『ワークマン式「しない経営」――4000億円の空白市場を切り拓いた秘密』も増刷を重ねている。
「めちゃめちゃ面白い! 頑張らないワークマンは驚異の脱力系企業だ」(早大・入山章栄教授)
「ワークマンの戦略は世紀の傑作。これほどしびれる戦略はない」(一橋大・楠木建教授)
なぜ、今「しない経営」が最強なのか?
スタープレーヤーを不要とする「100年の競争優位を築く経営」とは何か?
ワークマン急成長の仕掛け人が「ダイヤモンド経営塾」会員だけに語った「最新・限定特別講義」を特別にお届けする。

Photo: Adobe Stock

土屋哲雄(つちや・てつお)
株式会社ワークマン専務取締役
1952年生まれ。東京大学経済学部卒。三井物産入社後、海外留学を経て、三井物産デジタル社長に就任。企業内ベンチャーとして電子機器製品を開発し大ヒット。本社経営企画室次長、エレクトロニクス製品開発部長、上海広電三井物貿有限公司総経理、三井情報取締役など30年以上の商社勤務を経て2012年、ワークマンに入社。プロ顧客をターゲットとする作業服専門店に「エクセル経営」を持ち込んで社内改革。一般客向けに企画したアウトドアウェア新業態店「ワークマンプラス(WORKMAN Plus)」が大ヒットし、「マーケター・オブ・ザ・イヤー2019」大賞、会社として「2019年度ポーター賞」を受賞。2012年、ワークマン常務取締役。2019年6月、専務取締役経営企画部・開発本部・情報システム部・ロジスティクス部担当(現任)に就任。「ダイヤモンド経営塾」第八期講師。これまで明かされてこなかった「しない経営」と「エクセル経営」の両輪によりブルーオーシャン市場を頑張らずに切り拓く秘密を『ワークマン式「しない経営」』で初めて公開。本書が初の著書。2022年7月より東北大学特任教授も務める

「ユニクロやしまむらの市場には絶対行かない」という教訓

 私は商社時代はジャングルファイターでした。

 人と協力してビジネスをするよりも一匹狼的でしたし、スピード感と反射神経だけでなんとか三十何年やってきた。

 それでそこそこ成果が出てしまったからダメなんですよね。

 全然できないほうがよかった。

 そこそこできてしまったがゆえに部長になったのは早かったのですが、スケールが小さいだけにその上になかなか行けない。

 なんでも自分が自分がタイプで自分が率先してやらないと気がすまなかった。

 部下のことなんてまったく考えていませんでした。

 それでもニッチ市場ではナンバーワンの商品をつくっていました。

 パソコンがほとんどなかった頃、中国で中国語用ワードプロセッサーをつくったら、中国で結構受けました。

 共産党の学習資料作成によく使われました。

 裁判所の入口に貼られた判決文の告知でも見ました(死刑判決でしたが)。

 ただ、そこそこ行っても、所詮ニッチはニッチ。

 大成功には至りません。

 ニッチ市場にいるとメイン市場で活躍する夢を見ます。

 そこで、日本一安いレーザープリンタもつくったのですが、さすがにキヤノンやエプソンに1年で追いつかれ、大ケガをしないうちに素早く市場から撤退しました。

 ゲリラなので逃げ足も早いです。

 これでメジャーなマーケットには行ってはいけないという教訓を学び、これは今でもユニクロやしまむらの大きな市場には絶対行かない、競合したら絶対に負けるという教訓になっています。

 そんなふうに心がけていたら、内田和成氏(元早稲田大学ビジネススクール教授)が『ワークマン式「しない経営」』を読まれ、

 「『ユニクロ』にも『しまむら』にもない勝ちパターンを発見した

 とおっしゃってくださったので嬉しかったですが、はやる心を押さえて、自重しています。

『ワークマン式「しない経営」』では、

◎社員のストレスになることはしない
◎ワークマンらしくないことはしない
◎価値を生まない無駄なことはしない

 ことで4000億円の空白市場を切り拓いた秘密を一挙公開しました。

 私の初の著書です。気持ちを込めて書き尽くしました。

(本原稿は、『ワークマン式「しない経営」』著者・土屋哲雄氏の特別投稿です)

『ワークマン式「しない経営」』には「頑張らないで成果を上げるノウハウ」が一冊に凝縮されています。ぜひチェックしてみてください。


【著者からのメッセージ】

【ワークマン仕掛け人・新年特別講義】<br />ユニクロやしまむらの市場に絶対行かない理由

土屋哲雄:著
価格:1760円
発行年月:2020年10月21日
判型/造本:四六並製、288ページ
ISBN:978-4-478-11145-1
『ワークマン式「しない経営」』

たちまち5万部突破! 信頼のベストセラー!
急成長ワークマンの

仕掛け人が初めて全てを語る!

【ワークマン仕掛け人・新年特別講義】<br />ユニクロやしまむらの市場に絶対行かない理由

ワークマンは「しない会社」だ。

◎社員のストレスになることはしない
 残業しない。
 仕事の期限を設けない。
 ノルマと短期目標を設定しない。

◎ワークマンらしくないことはしない
 他社と競争しない。
 値引をしない。
 デザインを変えない。
 顧客管理をしない。
 取引先を変えない。
 加盟店は、対面販売をしない、閉店後にレジを締めない、ノルマもない。

◎価値を生まない無駄なことはしない
    社内行事をしない。
 会議を極力しない。
 経営幹部は極力出社しない。
 幹部は思いつきでアイデアを口にしない。

 目標を定め、ノルマを決め、期限までにやりきるといった多くの企業がやっていることは一切しない。
 とりわけ「頑張る」はしないどころか、禁止だ。

【ワークマン仕掛け人・新年特別講義】<br />ユニクロやしまむらの市場に絶対行かない理由

   

  それでも業績は10期連続最高益を更新中だ。
 2020年3月期は、チェーン全店売上(ワークマンとワークマンプラス)が1220億円(前年同期比31.2%増)。営業利益192億円(同41.7%増)、経常利益207億円(同40%増)、純利益134億円(同36.3%増)となった。

【ワークマン仕掛け人・新年特別講義】<br />ユニクロやしまむらの市場に絶対行かない理由

 2020年9月末現在、ワークマンとワークマンプラスの店舗数は885店舗(ワークマン663店舗、ワークマンプラス222店舗)となり、ユニクロの国内店舗数を抜いた。

「しない会社」が、どのようにブルーオーシャン市場を発見し、客層拡大して業績を上げたのか。どのように自分の頭で考える社員を育てたのか
 これが本書のテーマである。

 このテーマを解読する上で大切なのが、本書で初めて紹介する「しない経営」「エクセル経営」だ。

【ワークマン仕掛け人・新年特別講義】<br />ユニクロやしまむらの市場に絶対行かない理由

「しない経営」により「社員よし」「加盟店よし」「取引先よし」「会社よし」の”四方よしの経営”ができている。

「しない」とは、相手の立場で考えると、「されない」ということだ。
 無用な干渉をされないことで、自分の時間を有効に使えるので、ストレスフリーで売上を上げ、自分のペースで楽しく働くことができる。

 ワークマンにきてびっくりしたのが、データ活用ゼロの会社だったことだ。

 店舗在庫の数量データすらなかった会社が、高度なAIソフトやデータサイエンティストを使わずに、ただのエクセルを活用することで、どのように変わったか。

 ワークマンプラスの品揃えは「エクセル経営」で決まった。

【ワークマン仕掛け人・新年特別講義】<br />ユニクロやしまむらの市場に絶対行かない理由

  2012年以来、8年間飽きずにコツコツとデータ活用研修をやり続けている。
「継続は力なり」とはよく言ったもので、社員のデータ活用力は年々高まっている。
 まったく自信のなかった人、存在感のなかった人、店長に信頼されていなかった人が、いまやトップクラスの人材になり、会社を引っ張るリーダーになった。

 この本の最終章には、早稲田大学大学院・ビジネススクールの入山章栄教授との対談で、いま話題の「両利きの経営(知の探索×知の深化)」はどうすれば実現するかを考察した。

 本書で紹介する方法は特別なものではない。すべての企業で実施できるものばかりだ。

 ビジネスに携わる方には企業変革のケーススタディとして、経営者や幹部の方には、経営変革の参考材料として活用いただければと思う。

 この本は私の初めての本だ。成功談や美談を書く気は一切ない

 還暦直前に入社した私が、拙い頭でどう考え、実行したか。
 それだけをありのままに書こうと思う。

ps.【だから、この本。】で5回、インタビューを受けました。こちらもぜひご覧ください。

10/26、12/7、2/1「日経新聞」で大反響! たちまち第5刷!
日本が誇る経営学の4大泰斗が絶賛!
「『ユニクロ』にも『しまむら』にもない勝ちパターンを発見した」(早大・内田和成教授)
「ワークマンの戦略は世紀の傑作。これほどしびれる戦略はない」(一橋大・楠木建教授)
「縄文×弥生のイノベーションは実に読みごたえがある」(BCGシニア アドバイザー・御立尚資氏)
「めちゃめちゃ面白い! 頑張らないワークマンは驚異の脱力系企業だ」(早大・入山章栄教授)

【ワークマン仕掛け人・新年特別講義】<br />ユニクロやしまむらの市場に絶対行かない理由

(目次)
☆【はじめに】4000億円の空白市場を切り拓いた秘密
☆【第1章】「しない会社」にやってきたジャングル・ファイター
☆【第2章】ワークマン式「第2のブルーオーシャン市場」のつくり方
☆【第3章】「しない経営」が最強の理由
☆【第4章】データ活用ゼロの会社が「エクセル経営」で急成長した秘密
☆【第5章】なぜ「エクセル経営」で社員がぐんぐん成長するのか
☆【第6章】興味こそがやりきる経営のエンジンである
☆【第7章】「両利きの経営」はどうすれば実現できるのか
……早稲田大学大学院・ビジネススクール 入山章栄教授との対談

 これまでの全連載は、こちら

【ワークマン仕掛け人・新年特別講義】<br />ユニクロやしまむらの市場に絶対行かない理由

ご購入はこちらから!→[Amazon.co.jp][紀伊國屋書店BookWeb][楽天ブックス]

★★★売れてます! 頑張らずに成果を上げ続ける方法
★★★【130万PV突破】大人気連載ランキングベスト5★★★
【第1位】ワークマンは社員のストレスになることはしない  
【第2位】一橋大・楠木教授激白!ワークマンをマネると【地獄の一丁目】行きになる! 
【第3位】ワークマン式エクセルで企業風土を変える方法……ワークマンの仕掛け人と早大入山教授の白熱対談2
【第4位】【GW限定講義1】ワークマンが「報連相」を禁止した、たった1つの理由
【第5位】“人生一発逆転の新・知的生産術”ワークマン式朝2時30分起きの仕事術 

ワークマン式「しない経営」

土屋哲雄 著

<内容紹介>

ワークマン式「しない経営」で4000億円の空白市場を切り拓いた秘密!頑張らない、残業しない、ノルマ課さない、極力出社しない、社内行事しない、接客しないのに急成長の理由とは。店舗数ユニクロ超え!ワークマン急成長の立役者、初の著書。ただのエクセルで企業風土を変える方法を初公開。早大入山教授驚愕・絶賛!

レビュー

「しない」ことだけでなく、意味ある「すべきこと」が多く隠されている書


2022年12月22日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
下手なケーススタディより断然、面白かった。もはや書籍仕立てのケーススタディと云ったほうが適切か。そして、4章の「エクセル経営」はDX化へのチャレンジの軌跡とも言えそうだ。

タイトルの「しない」の数々には、日本の企業で慣例的に行われていることが多い。土屋専務は、それらを数字にならないコストや負債と認識して、頭の中で損益計算書や貸借対照表に計上しているのではなかろうか。

一方、「しない」に目が行きがちな本書であるが、

・市場の選定・ポジショニングの妙
・OneToOneマーケティング(顧客管理)は、敢えてしない(しなくても他の方法がある)
・性善説(善意)を優先することによって得られるコスト削減効果

といった視点も非常に興味深い。

また、前出の「エクセル経営」においては、ツールは「使える」ではなく「使い方」が大事なことを示唆している。

人材育成の面においては、レベル5のスター・プレーヤーの発掘や伸長ではなく、3のプレーヤーをいかに4にしていくのか視点になっており、キーエンスの人材教育と近いものを感じた。それは、全員参加型のリスキリングともいえる。

3章に出てくる「頑張ってできても意味がない」には、昭和生まれの土屋専務による、昭和的マネジメントに対する真っ向からの否定の意味が込められ、仕組み化・再現性による生産性向上の重要性が説かれている。

「しない」ことだけでなく、意味ある「すべきこと」が多く隠されている書だ。

マネジメントのお手本

2020年11月29日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
ワークマンと聞くと成長著しい会社。
かつては、作業服専門店と目されていたが、今では作業服の枠を飛び出して、新しい市場開拓に成功した会社として知られる。
そんなワークマンは変わった経営方針を持っているようだ。

それは、こんな具合だ。
”社内行事をしない。 会議を極力しない。 経営幹部は極力出社しない。 幹部は思いつきでアイデアを口にしない。 目標を定め、ノルマを決め、期限までにやりきるといった多くの企業がやっていることは一切しない。 とりわけ「頑張る」はしないどころか、禁止だ。 それでも業績は 10 期連続最高益を更新中だ。”
なんと、頑張ることを禁止しているというのだ。
頑張ることはよくないことで、頑張らない状態で業績が上がることを目指す。
体育会系の正反対を行くような会社である。

この会社は目標に関しても変わった考え方を持っている。
”短期目標をいくつも掲げるほど会社はダメになる。 社員に過度なプレッシャーをかけても、いいことは一つもないし、社員も絶対に伸びない。 ノルマや納期がないほうが、自分の頭で考え、順序立てて仕事ができる。 それがいい結果につながる。”
高い目標を掲げ、社員にプレッシャーを与えながら短期的に結果を出す経営者が良い経営者だという考え方もあるだろう。
しかし、ワークマンは違う方針を貫く。
決して、目標を立てないということではない。
短期的な目標よりも、社員が自分で考え、順序だてて仕事をすることをサポートする。
そうすることで結果が出なくなると恐れて、自発性を促せないマネジャーは世の中に多く存在するだろう。
しかし、著者は社員に任せたケースで、想定以上に時間がかかったなどというケースはほとんどないという。
社員に任せると良い結果がでるという好例である。

そして、この会社の大事なコンセプトは頑張らないこと。
”ワークマンでは「頑張らない」「頑張ってできても意味がない」 と考えている。・・・誰にでもできる仕事に標準化するからこそ、 30 年、 40 年と続くダントツ経営ができる。 それにはまず、 絶対に勝てるポジション取り をすることが重要で、次に 誰がやっても売上が伸び続けるしくみ が重要となる。”
頑張らなくても自然と結果が出るような仕組みを作る。
そのことが大事であると認識しているのである。
それはダラダラ仕事をすることを認めているということではない。
「大きな目標」に向かって社員全体で議論しながら、自発的に仕事をすることを促す。
そうすることで、会社の方向性と自分のありたい姿が一致し、高い成果につながっていく。
厳しいノルマや納期などのストレスがないと、人は自発的に全力で走る。
まさに、やるべきことをやらせるのではなく、やりたいことを追い求めてもらうマネジメントであるといえる。

マネジメント手法として勉強になる一冊。

Excelユーザーに本当に必要な本はこういった本

2021年5月30日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
この本に書いてある「エクセル経営」という言葉で購入し読んでみると、この本は全部で約300ページありますが、Excelに関することは30ページくらいしか書いていません。
と書くとこの本はExcel目的で読む本ではない、と誤解されそうですが、Excelユーザーであれば読むべき本です。特に経営に少しでも関係する立場の方(お金やコストに関わることをしている方)にはおすすめです。
Excelが企業で本来どのように使うべきかが書いてあり、世の中でExcelがいかに活用されていないか、それだけに今この本に書いてあるExcelの活用法をすれば、一歩リードできるのではないかと思わせられる内容です。
Excelを勉強しようとすると、「Excelの基本」といった操作に関する本で勉強し始めますが、本来はこの本で、なぜExcelで勉強するのかを知ることの方が重要な気がします。ただ全くのExcel初心者ではこの内容は理解できないと思います。この本の内容を100%吸収するためには、多少なりともExcelが操作できたほうがよいでしょう。
経営学に分類される内容なので、Excelユーザーからは、関係ないと思われがちですが、本当にExcelユーザーに必要なのはこういったExcelを何故使うのかの哲学の本なのかもしれません。

全人間が読むべし

2020年11月26日に日本でレビュー済み
特に目新しい話はなく、基本的な経営戦略をちゃんとやっているというのが読んでいての感想。早い話がやっていることは極自然なことというだけのこと。実際にこれをやるのはすごく難しく、ここまで徹底してやっている会社は世界を見てもあまり多くないと思う。
経営者だけではなく、ビジネスマンなら必読で、しかも実践するべきだと思う。(自戒もこめて)
あと、学生が読んでも応用できることはたくさんあるし、なんなら就活で会社を見る目が養えると思う。

タイトルとURLをコピーしました